日本の野菜収穫量の第1位、料理では使い方の幅がとっても広い大根。
とってもたくさんの品種があり、一年中みかけますね。春に収獲する春大根や夏採り大根もありますが、おいしいのはやはり、秋から冬にかけて採れる大根です。
昔から家庭の常備薬的の野菜として愛され、あの名作「徒然草」にも「焼き大根」で健康を保つ役人が登場するほどで、
・食欲増進
・のどの薬
・食べすぎやおなか
の薬としても重宝されてきました。そんな生活になじみ深い大根ですが、「白首大根」と「青首大根」があり、かつて愛された「白首」は今ではすっかりと影をひそめ「青首」が主流となっているのをご存知でしょうか?
その理由はいかに。秘密を探ってみました。
目次
【白首と青首】あなたはどっちがタイプ?
青首ばかり見かける理由のひとつは、若い世代が食卓の主導権を握っているからです。
以前、テレビ番組の企画で、青首が全国に広まった理由を味覚の差に求め、成人年齢の方20人に両者を自分でおろして食べてもらうという実験をしていました。
すると「青首はおいしい、白首は辛い」。結果は15対5で青首の勝ち。
どちらも同じように見えますが「白首大根」は辛味が強く、「青首」はマイルド。大根おろしにするとその差がくっきりと出ました。
白首大根は辛さの点で若い世代の味覚に合わなくなってしまったようですが、実はもうひとつ、白首が減ってしまった理由があります。それは大根の長さです。
青首は育つと地上へせり上がってくるので引き抜きやすく、しろうとでもあっけなく抜けます。
ところが、白首の代表各である練馬大根の長さは約75cmもあり、それを引き抜くときにかかる重さは青首のナント4倍!これは農作業する方の大きな負担になっていたのです。
プロにはプロの技あり
農作業には腰痛がつきものですが、その中でもとくに大根抜きは大きな原因。しろうとが抜くと腰を軸に抜こうとするので、腰への負担がかなり重くなります。
それに比べて、プロは脚を軸に腰は付属品。脚全体の力でスポっと引き抜きます。とはいえ大根抜きの負担はプロの技でもかなり重いでしょうね。
ついでに申し上げますが、、、昔、しろうとの私は調子よく数十本抜いたことがあります。ただ、次の朝、腰痛で起きることができませんでした。
もう「あまりのラクさに戻れない」早太りの魅力
話変わって、白首大根の産地、三浦半島のこと。1979年の秋に超巨大台風に襲われ、収穫前の大根畑が壊滅状態に。
そこで急きょ早太りの青首のタネをまいてみたところ、みごとに畑は復活しました。
青首は栽培しやすく、作業もラク。
それに形が整ってるうえ、「す」の入りが遅く、甘くてみずみずしいのも魅力的。さらには病気にも強いといった理由で、またたくまに全国で栽培されるようになったのです。
青首の作業のラクさにもう白首には戻れなくなった…青首主流の理由には、農家の方の選択もあったんですね。
【最古の野菜】のひとつが、まさかの大根!?
日本には弥生時代に中国からやってきて、各地に広がり、さまざまな品種が生まれました。
原産は地中海沿岸、中央アジア、華西高原説などあり、定説ではないのですが、いずれにしても最古の野菜のひとつで、古代エジプト時代にはすでに栽培されていたのです。今では大きく
・ヨーロッパ大根
・中国大根
・日本大根
の3種類に分けられて、流通しているそれらを大別すると、世界では100種類以上。その中でも日本は地域ごとに数100種類以上もあり、日本ほど品種が多い国は他にないといわれています。
なぜ辛い…【消化酵素】もたっぷり野菜!
栄養学的に、95%が水分の根のほうは、ビタミンCと消化を助けるジアスターゼがたくさん含まれています。
このジアスターゼは熱に弱いため、生のものをおろして食べるのがおすすめ。葉はカロテン、ビタミンC、カルシウム、食物繊維が豊富な緑黄色野菜です。
大根おろしの辛味のもとは、グルコシノレートという成分。これはワサビやカラシナなどの辛味をもつ植物にも多く含まれ、細胞組織が破壊されると中から出てきます。このときに
・ミロシナーゼという辛味成分に
・関与する酵素が働いて
・化学反応を起こし
・大根おろしの辛味成分の
・イソチオシアネートを
生成します。大根おろしが辛いのは、細胞をおろし壊してイソチオシアネートを大量につくるから。
そのため、調理法の中でも大根をおろすとき、辛味が欲しいときには力強く直線的に。
逆に辛味が少ない大根おろしが必要なときには、やさしく円を描くようにおろすというわけです。
【上・中・下】料理に合った部分を使おう
大根は部分によって辛さが違い、上のほうが甘く、下にいくほど辛みが強くなります。料理に応じて、使う部分を選びましょう。
〈首の部分〉
葉に近い首の部分は甘いが繊維質が多いので、おろしやサラダに。
〈中央部分〉
真ん中は何にでも使える部分。塩もみにして浅漬けにしたり、おでんやふろふきなどの煮物にも向いています。
〈先端部分〉
先端付近はもっとも辛い部分。辛いおろしがお好みでしたらこの部分を薬味やみぞれ鍋につかいます。おろすとビタミンCが減少するので、チョットだけ酢を加えるのがコツ。
〈外皮部分〉
皮は軽く干して、パリパリ漬に。
おいしい見分け方
・全体的にハリとツヤがあるもの
・ひげ根が少なく、持ってみるとずっしりと重い
・表面にシミや傷がないもの
・黒ずんだり、ひび割れしているものは「す」が入っているおそれが
・葉つきのものは葉の色が鮮やかな緑色で、みずみずしいものが新鮮。
・黄色いものは古いので、選ばない
保存方法
大根の水分は葉からどんどん蒸発し失うので、すぐに切り分けます。
丸のままの場合は新聞紙でグルっと包んで冷暗所で保存。使いかけのものは切り口をしっかりとラップし、冷蔵庫で保存します。
最後に
・青首主流の理由は長さと辛さの点での世代交代
・消化を助ける酵素がタップリ
・「白首大根」は辛味が強く「青首」はマイルド
・最古の野菜のひとつ
・部分によって辛さが違う
日本では最古の書物「古事記」にも書きとめてあり、春の七草のひとつ「すずしろ」として親しまれてきました。
料理に応じて部位を選んだり、使い方の幅がとっても広く、結構色んな品種があって味わいのある野菜ですね。
生のものをおろして食べるのが一般的におススメですが、味のしみたおいしさを楽しむならおでんやふろふきに。
軽く干したり冷凍したものを使えば、短時間でビックリするほどおいしく仕上がります。
辛いほうがお好みの方も、マイルドがタイプの方も、大根生活を楽しみましょう。